夢見る夢子ちゃん › 2015年02月

PR広告

  

Posted by at

2015年02月03日

その昔

その昔、「カタヤ」と呼ばれる露天商売があった。空地や広場、小学校の校門前などに、一畳ばかりのゴザを広げて営業していた。

カタヤは「粘土型屋」の略で、素焼きの大小粘土型を持っていた。お金を払うと粘土型に粘土を押し込み、慣れた手つきで引き剥がして粘土を渡してくれた。勿論手渡された粘土には、型に彫られた図柄がくっきりと写し取られているのだが、これで商売が成立して「ありがと」「またね」とはならない。

カタヤの商いはまだ続き、粘土に写し取られた漫画の主人公や動物、軍艦や戦闘機の図柄を彩色するのに必要な極彩色の顔料、金粉銀粉を販売し、さらには彩色の出来栄えを点数化して子供たちを競わせた。

型を写し取るための粘土は、型の大きさにより五円、十円、十五円と段々だったと記憶するが、上が幾らまであったのかは知らない。せいぜいが十円玉二枚握りしめて駆けつける鼻垂れ小僧のわたしには、大きな型は縁のないものだった。

それでもカタヤのおっちゃんの評価次第では、何百点もの点数が付けられた大きな型が自分の物となり(型が貰えるわけではなく、型押しした粘土が貰える)、その大きな粘土に彩色して茣蓙の上に飾られる名誉をおもうと、どんなに母親から「馬鹿らしいからダメ」と注意されてもせっせとカタヤに通い、道端に座り込んで大好きな般若面に彩色を施すのだった。Autel
  


Posted by tuiobos4 at 16:43Comments(0)